robou55’s diary

http://d.hatena.ne.jp/robou55/ のつづき

近い未来と遠い未来

  1. 自己増殖する極小の「ナノロボット」をめぐる議論

http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030619303.html

  1. 際限なく拡大する? 「ナノテク」というカテゴリー

http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030618307.html
両方、ナノテク関連の記事だが、ドレクスラーの「ナノ機械」がナノテクの中心であるかのように書いてあるようにみえる。
ノロボットはたしかに原理的には可能な夢かもしれないが、それは遠い未来の話である。現段階では実現するための手がかりさえない(生物を利用するという手を除いて)というのが実情であり、実務的な科学者であればそのような研究テーマを声高に叫ぶことは避けるはずだ。
いまの、いわゆるナノサイエンスの現状はどうかといえば、「ナノサイズのものを分析できるようになりました。いろいろっやってみたらナノサイズのものが結構簡単にできるみたいです。さらに物質の個性はナノサイズくらいの固まりをどう制御するかでかわってくるみたいです。ということがわかりました」といったレベルではないかと思う。
たしかに、走査型トンネル顕微鏡を使い、原子を一個一個移動させて絵を描く、といったこともできているが、そんなことができるレベルの装置を維持できている研究室は数えるほどしかなく、実際、走査型トンネル顕微鏡を使っている感触からすると、そのような話をベースに絵を描くのは非現実的というものだ。
二つ目の記事は、科学者が何でもかんでもナノと名を付けはじめた、という批判的な記事になっているが、科学者サイドから見たナノの中心はどちらかといえば、この記事でいうところの「広義な意味」でのナノであるし、そこにナノの重要性がある。簡単にいうと、どの分野でもナノにつながってしまうからこそ重要なのだ。
なぜナノが重要なのか?、実務的な科学者なら、こんな風に答えると思う。「いままでみることができなかったナノスケールの物体の組成、物性を計ることができるようになった。ナノの世界の現象をもとにして筋肉は動き、物質の性質が決まる。また、これまでにない新しい物性をもつ物質を生み出せる。っていうか、今の時代、ナノまで制御しないとダメ」。
二つ目の記事でいうところの「広義の」ナノテクノロジーは「近い将来、実現可能なことを目指す」実務的な側面といえる。ナノロボットなどというものは一つの分かりやすいあさはかな例え話に過ぎない。ちいさな子供に「将来の夢はなに?」と聞くようなもので、大人はもう少し分別のある実行可能な「目標」を掲げるのである。
ただ、たしかに、どうも新しい分野をつくっていこうという動きよりは今までの枠でいかにうまくやってゆくか、という部分で戦々兢々としている人も多いようであり、それは問題かもしれない。