ロレンツォのオイルにみるインフォマティクスと戦略とリーダーの重要性
子供の苦しむ姿がヒジョーに厳しい映画であるが、実話ベースのお話。研究の進め方という意味で学ぶことが多かった。
- すでにある生理学的な情報を組み合わせることで有効な治療法を発見することができた。何人かの研究者はキーとなる情報を知っていたが他の知識と統合されることがなく、埋もれてしまうところであった。-> インフォマティクスの重要性。
- 医者(科学者)は1を知っていたとしても、「人体にいきなり試すのは危険だ」ということで踏み切れない。また、この特定の病気の知識や、治療をする動機づけがなければそこまで試さない。さらに、サイエンスの場合は研究者として生き抜くための研究になりがちで、必ずしも人(とくに個人)を治すための研究にならない。->「個人を治す」という明快な戦略目標とそれを熱く推し進めるリーダーシップの重要性。
おそらく、銀行家という職業上、プロジェクトマネージメントに長けた人たちだったのだろう。
ところで、インフォマティクスには元になる情報が必要で、元になる情報は、どれが重要でどれが重要でないかの判断は難しい(目的に応じて変わってしまうため)。戦略的な研究が必要なことは確かなのだが、戦略にばかり目を奪われ選択と集中をしすぎると知の基盤が失われ、インフォマティクスも成り立たなくなる.
あらゆる「あれってどうなっているんだろう」ということに対して、教科書に答えが書いてあるよ!、というのが理想である(書いていないものは見つけようがない)。ただ、個人の研究者の体験レベルの話(論文にならないレベルの話)は検索のしようがなく、コミュニティーを作るしかない.
ロレンツォの病気の研究者はシンポジウムなどで横のつながりを持つのがあまり得意ではなかった(資金がなかった)ようだ。ロレンツォのお父さんはそのあたりの組織づくりがうまかったのだろう.いまならネットを通じてもう少し簡単にコミュニティーが出来て欲しいところだが、あまりそういう話は聞かない.
かならずしも研究の得意な人=組織づくりの得意な人ではないわけで、各学会にコーディネーター、あるいは監督的な役割をする人が必要なのかもしれない。