robou55’s diary

http://d.hatena.ne.jp/robou55/ のつづき

知識まとめ

つれが乳癌と診断されたのでまとめ情報をメモしておく。もう乳癌は診断法や治療法などが確立している物と思っていたが、そうでもないようだ。過去の経緯なども引きずっており、分類するだけでも患者側からは分かりづらい側面も多い。どうも、とにかくみつけたら切る!、なので、大きさ以外の種類分けという基本的な部分でも研究が難しいのではないかと思う。また、「ガン」をはっきり定義することも難しいようだ。医療は科学ではない、ということを思い知る日々である。

1. 分類

乳癌は乳腺に発生する。乳腺から外に出て行くか出ていかないかがその後の治療や完治の可能性を決める大きな分かれ道である。癌の成長課程として、はじめは乳腺の中にとどまっていた小さながんが大きくなって広がり、乳腺を突き破って広がる、という説明をよく見る。このため、乳腺にとどまっている非常に小さながん=非浸潤癌、乳腺の外にでるまで大きくなったもの=浸潤としているところが多い。しかし、実際には乳腺の外には出ずに、乳腺の中を伝わって広がり大きくなる場合もある。従って、非浸潤には、(1) 浸潤に変化する浸潤の芽、あるいは未浸潤とでも言うべきタイプのものと、(2)乳腺の外には広がっていかずに大きくなるタイプの二種類(あるいは二通りの成長様式)がある、と言う方が正しいように思う。ただし、小さな状態の場合には、現在の技術では、両者を区別することは不可能である。

a. 浸潤:多くの場合、しこりとして発見される。乳腺を突き破って成長し、他の臓器に転移する可能性がある。転移のしやすさは千差万別で、現在の所、事前判定は不可能。
b. 非浸潤(将来は浸潤になる):浸潤に発展するが、乳腺の外には出ていない状態。小さく、しこりとしては感じられない。マンモグラフィーで見つかる。「浸潤の芽」というイメージか。転移の可能性は不明(マンモで見つかるレベルでも転移する物は転移するとの話もあり)。個人的には、未浸潤、とかにするべきかと思うが、おそらくこのレベルの大きさだと、将来浸潤になるのか非浸潤になるのかを判別する方法がない。
c. 非浸潤(浸潤にはならない):乳腺の中だけで広がる。しこりになる場合もあるし、蜘蛛の巣状に乳房全体に広がり、しこりとしては感じられない場合もある。他の臓器に転移する可能性は低い。ある意味、一般的な「ガン」のイメージとはちょっと違うかもしれない。転移しにくいという意味では浸潤よりは良いが、発見しづらく、気づいたときには乳房全体に広がってしまい、全摘出以外に方法がなくなってしまうこともある。

2. 検査の信頼性

浸潤ガンと非浸潤ガンの分類がその後の治療の考え方にも影響を与える。しかし、術前の細胞レベル/組織レベルの検査で明快に分類をすることはできない。生検は明確なYES/NO試験ではなく、形態などの要素から複合的に判断する。したがって担当者依存性があり、検査のセカンドオピニオンも必要といえる。

術前の検査で非浸潤ガンと診断されても手術後のより詳しい検診で 30%程度は、浸潤部分が見つかる。つまり、術前の「非浸潤」診断の30%は誤りである。逆、すなわち浸潤と言われていたけど非浸潤だった、があるのかどうかは不明。
#結局、細胞や部分的な組織から分類は判断できず、病巣を見ての「結果論」を見るしかない印象である。

このため、事前診断で、非浸潤と判定されると、後述するラジオ波など、患者の負担の少ない開発中の術式は、非浸潤癌には適用されない。なぜなら、ラジオ波などを使うと詳しい検査ができなくなり、癌の正体が分からなくなってしまうため、術後の治療方針がたたなくなるからだ。

3. ステージ

結論から言うと、とくにしこりの大きさによるステージの分類はあまり意味がないように思う。おそらく、むかし、ガンの中身がよく分かっていなかった時代の名残である。
たとえば、転移性の癌であればしこりになる前の段階でも種細胞がばらまかれていると考えられており、小さくても転移の可能性がある。大きくても非浸潤であれば転移の可能性は少ない。しかし、非浸潤でしこりとしては小さくとも、蜘蛛の巣状に広がっていたりして、乳房全摘出の対象になったりする。
素人判断では、ステージの数値が小さいほど、安心で小さな手術ですむのかな、と思ってしまうため、大きさによる分類は患者をいたずらに翻弄するだけで、やめた方がよいと思う。

4. 治療方針

4-1 通常
浸潤:手術による摘出および放射線療法および抗がん剤・ホルモン治療を併用する必要がある。

非浸潤・未浸潤:手術による摘出でほぼ完治。ただし、乳房温存の場合は放射線療法は必須。

  • 手術による腫瘍摘出方法は、ほぼ見解が一致しており、方法も確立している。
  • 余分に切除したから安全、というわけでもなく、必要最小限を見極めてきる、という方針が主流である。細胞レベルでの取り残しがある可能性はあるので、放射線療法との併用が必須である。全摘出の場合との5年生存率を比較して差がなかった、という調査結果を根拠としている。ただし、非浸潤・未浸潤・浸潤と分類した個別の統計がどうなのかはよくわからない。
  • 乳房そのものよりも、リンパ節を切除することによる弊害=リンパ浮腫が一番やっかいである。このため、必要最小限のリンパ節のみを除去する術式が主流である。
  • リンパ浮腫はリンパ節をとる手術を行わない場合でも、乳房への手術のために切開することで起こる場合があるようだ(未確認)。
  • 誤解を与えるのは、「乳房温存」と言う言葉。これは、乳腺全体をとらない、という意味なので、「おっぱいの形がきれいなまま残る」とは違い、摘出量が多ければ大きく、いびつに変形する。
  • 「おっぱいの形の修復」に関しては、まだ術式の開発が進んでいる段階である。ここについては「おっぱい再建」でまとめる。

4-2 近藤理論

患者よ、がんと闘うな (文春文庫)

患者よ、がんと闘うな (文春文庫)

本が出た当時は、全摘出(筋肉も含めて)が普通であった時代よりちょっと後くらいであるので、かなり衝撃的だったと思う。この本の内容の一部は現代的な治療方針には取り入れられていると思う。

基本的にはほおっておいて良い。生活に支障がでたら最低限の治療をする。

  • ①転移性の場合、発見時には転移している可能性が高く、切っても結局再発/転移する。②非転移性の場合、ほおっておいても大きな問題は起こさない(寿命には影響しない)。
  • むしろ、おおきな手術や抗がん剤治療などの体に大きな負担のかかる治療をすることの方が寿命を縮める。

従って、しばらく放っておきなさい、なにかするなら放射線とか、体に負担の少ない物からにしなさい、というわけだ..... 正直なところ、結構説得力があるので、私本人が患者ならそうするかもしれないが、常識にとらわれている家族には受け入れがたい選択肢である。

  • あくまで統計に基づく議論なので、「あなたの場合に統計的な解釈があてはまるのか?」はわからない(あなたのガンは転移性かもしれないが、実際には、運良くまだ転移していないかもしれないし、転移した物はまだ小さくて弱く、術後の抗がん剤治療で根治できるかもしれない。ほおっておいて、あちこちばらまかれるよりはとっとととった方が遙かによい!とか。)。
  • 事前検査で非浸潤性であることがはっきり分かれば、また選択肢は違うかもしれない。また、体に負担の少ない放射線やラジオ波でとりあえず腫瘍をつぶしておく、というのは近藤理論的にはどうなんだろうか?

手術

方法1. 通常の手術
 乳輪からメスを入れて摘出する。

方法2. 内視鏡
 乳輪からメスを入れて摘出する(一般的)。
 脇からメスを入れて摘出する(あまりやってない)。

大腸などと違い、通常の手術と内視鏡ではそれほど大きな差はないような印象。脇から内視鏡を入れる場合は、傷はだいぶ目立たないらしい。リンパ腺の検査や、乳房再建術のときに脇を切る場合が多いので、脇からやってもらえるなら脇の方がよいと思われる。

手術以外

方法1. ラジオ波で焼く
肝臓癌では健康保健対象になっている術式。まだ、どの程度のパワーでどの程度の範囲が焼けて、癌をどの程度取り除けるのかを試験している段階。
ラジオ波を行っている病院でも、非浸潤癌の場合は、通常の手術を勧められる。これは、ラジオ波で焼いてしまうと詳しい組織検査ができなくなり、治療方針を誤る可能性があることと、手術で病巣を取り除くことで完治すると考えられているので、医療機関としては実験的方法を適用するメリットがないためである。また、非浸潤では、薄く広く広がっていることがあるので、この手法では取り切れない可能性もあるのだと思う。

方法2. 凍らせる
基本的には1と同じ。